子どもに優しくない

週末、いつも行ってる近くのショッピングセンターへ行った。
郊外型の大型ショッピングセンターで、スーパーやホームセンターや本屋や電気屋や映画館もついている、便利な所だ。蜜柑にとっては最高に好きな場所の1つであるようで、週末になると必ず「いきたいいきたい」と言っている。でもこの週末は、そこで、ちょっと悲しい気分になることが、いくつかあった。
本屋に行った時のことだ。蜜柑は、うれしさのあまりか、スキップをしながら絵本売り場に向かった。混んでいる時は「歩きます」と止めるんだけれど、割と広いその通路(五人くらい横に並んで歩けるくらい)にはほとんど人がいなかったし、病み上がり久々の買い物だったので、好きにさせていた。蜜柑はスキップで20代前半くらいのカップルを追い越し、絵本売り場に着いた。私がその後を歩いて追いかけ、カップルの横を通った時。
「うっとうしいなぁ」
カップルの女性がそう吐き捨てるのを聞いた。

あ〜、うっとうしいのかぁ。「危ないな」とか「びっくりしたな」じゃなくて、「うっとうしい」んだ。その時の蜜柑は特にうるさく声を出していたり、自閉症からくる常同行動をしていた訳ではないので、障碍ゆえの行動には見えなかっただろう。普通に、子どもがはしゃいでいるようにしか見えなかったと思う。だとすると、彼女が「うっとうしい」と思っているのは、「はしゃいでいる子ども」という存在そのものなんだよなぁ、きっと。
もちろん、店内でスキップする蜜柑が行儀が悪いと思われるのは当然だし、止めてりゃよかったなぁと、私も充分反省はしている。しかし、例えばですよ、蜜柑が繁華街のしゃれたデパートの婦人服売り場のど真ん中で走ったり、混雑している駅の構内を走ったり、オフィスビルの中で走ったりしてうっとうしがられるのは、そりゃもうしょうがないと思う。私も平謝りだ。でも郊外型ショッピングセンターの書店の絵本売り場の真ん前で、子どもがばたばたしていてうっとうしがられるというのは、どうなんでしょう。そんなに子どもが嫌いか、あんた。あんただってついこないだまで子どもだったのに。これ買ってとか言って、店で騒いだことないんか。おもちゃ売り場に走って行ったことないんか。
なんだか、いろいろ考えてしまった。でも、「このカップルきっと結婚はないな」と意地悪く思ってしまったりもした。子ども嫌いな女に自分の子ども産んで欲しいと思う男は少ないと思うから。いやでも男も軽率な奴なら出来婚ってケースもアリか。ま、そんなことはどうでもいいんだけど。
まあ、店内で走る子どもを憎む気持ちも判らんではないんだけど。店の中で鬼ごっこしている子どもとかたまに見ますね、あれは私もうっとうしいと思う。というかあれは危険だ。それこそ、親はなにやってるんだ!と、思っちゃう。

で、そんなことがあった後、蜜柑は欲しい雑誌を見つけて、買ってくれと言い出した。その雑誌は1日発売のもので、後1週間もしないうちに最新号が出る。そんなものにお金は出せないので、「4月になったら新しいのを買ってあげる」と言い聞かせたのだけれど納得が行かない蜜柑。わんわん泣く。うるさいので書店から連れ出し、外へ。しばらく泣いて、ちょっと泣き止んだのでスーパーへ。するとまた本のことを思い出して泣く。外はちょっと寒かったのでスーパーの入り口の辺で蜜柑をなだめていると、警備員の人が近付いてきた。なんか、じっとこっち見てるし。不審に思われたかなと思って、「蜜柑くん、だからね」「4月になったらお父さんが買ってきてくれるからね」等と声をかけて、血縁であることをアピール。
スーパーで泣く子どもなんて、あんたしょっちゅう見とるやろがい!!
あー、子どもを泣かせておくこともできんのかなぁ。

なんというか、現代社会はとっても「子どもに優しくない」と思うことがちょくちょくあります。子どもに「大人」を求めているというか。聞き分けがよく、はしゃぐこともなく、おとなしく大人に手を引かれている子ども。そういう子でないと買い物に来てはいけないのでしょうか。
買い物に限らず。子どもがのびのび過ごせる所って、一体どこにあるんだろう、と思ったりもします。学校でも、幼稚園保育園でも、大人の目の届く所で遊ぶことになります。放課後子どもだけで遊ぶと言っても、都会では子どもが遊べる所というと、公園くらいしかありません。近くの公園に行くだけでも、最近の子どもを巡る犯罪がちらついて、親としては一人で子どもを遊びに出す勇気がありません。小学生くらいになって、やっと「お友達と一緒なら」と送り出すことができるくらいです。そして小さな公園に、町中の子ども。ぎっしりです。キャッチボールもできません(それ以前にボール投げ禁止とか書いてあるし)。公園以外で遊びたくても、道ばたは車や人がひっきりなしに通るので遊び場にはなり得ません。空き地なんてありません。もしあったとしても、柵に囲われています。お金を払って少年野球のサークルやサッカーのサークルに入れば、思いっきり走り回ることができるのでしょうが……。
「子どもは外で元気に遊んで」……都会の子どもは、そういう環境にはありません。家でゲームをしていた方がいいや、塾に行った方が友達に会える。自然な流れです。
ならば、田舎ならいいのでしょうか。そうでもないでしょう。最近は場所に関わらず、子どもを巡る犯罪がニュースになっています。子どもに安全な場所なんて、日本中どこにもありません。
大人が、子どもを、家の中に押し込めたのです。
とか書いている私も、大人の一人です。自分の子どもが楽しく過ごせる環境を作りたいと日々模索していますが…道は見えていません。