「産む」という選択

リンクさせていただいている、渡瀬さんの日記
http://d.hatena.ne.jp/yasai/20041110#1100087275
経由で、こういう質問を見つけました。
皆様、私を説得して下さい:私には子供がいません。産みたくないのです。理由は・経済的に厳しい・体力的に不安がある(出産そのものに支障はなさそうですが)・夫の協力は得られそうもない・自分および夫に似た子供を好きになれる気がしないといったところです。子供要らない!と断定できればそれはそれで気楽ですが、なんとなく社会に対して責任を負っていないような引け目を感じるのです。そこで、私が子供を産みたくなるような説得をお待ちします。寧ろ産むな、でも納得できるものなら結構です。できるだけ合理的な説得を希望しています。産みたくないならソレはそれでいいじゃない、というものと、産んじゃえば何とかなる、というのはNGと致します。ネタでも構いません。URLもなくてもいいです。ご回答の方は年齢(○歳代で結構)と性別、も併せてお聞かせ下さい。(上記条件を満たさない場合ポイントを差し上げられない場合がございます)
詳しい内容はリンク元を見ていただくといいと思うんですが。これは回答したい!と思ったけれど、あっというまに受付期間が終了してしまったので、トラバをさせていただきました。渡瀬さんの意見がものすごく頷ける内容なので、今さらかもしれませんが…。

そういえば私は、以前友人に、似た相談をされたことがあります。産むべきか、産まないべきなのか、と。そのとき私は、確かこう返事したと記憶しています。

「○○さん、あなたはどうしたいのかなぁ? 産むのも育てるのも○○さんなんだから、○○さん自身が納得していなきゃ乗り越えられるものじゃないよ」

「産んでみたらかわいいかもよ」「自分の老後のために」「社会の将来のために」「孫が見たい」「子どもとキャッチボールしたい」みんな、勝手なことを言います。でもね、その人たちの誰一人、自分の子どもを育ててくれる人はいません。(父親は別だけどね。でも上記の質問者の方はダンナさんの協力は得られなさそうとおっしゃっています)自分の子どもは、自分で育てなければならない。体力的にも、精神的にも、育児ってかなり大変なことです。それから…

障害をもつ子どもの親として一番思うことは、「子どもは自分の分身なんかじゃない」ということ。分身なんてものではなく、一人の独立した人間なんですよね。みんな、一人一人違う。他人(この場合は親)の思うようになるなんて都合のいいものでは、ありません。私の子どものように、障害をもって生まれてくるかもしれない。健康に生まれてきても、何かの事故で障害をもつことだってあり得ます。犯罪にまきこまれることだって、逆に犯罪者になることだって。そこまで極端でなくても、期待するほど勉強ができないかもしれない、期待するほど親のいうことを聞かないかもしれない、期待するほどお金を稼いでこないかもしれない、期待するほど老後の面倒をみてくれないかもしれない。
自分の期待したとおりの子ども。そんな子どもは、まずいないでしょう。

自分の子どもがどんなでも、愛せる自身がありますか?

でも逆に、子どもは、親のことを愛しています。もう100%全面的に愛しています。「親のこと好きじゃない」という方も、小さな子どもの頃から親を嫌いだった訳ではないはずです。親との関わりの中で、何か傷付くことがあって、自分を守るために親を嫌わざるをえなかったのではないでしょうか。
また、自閉症の子の場合、愛着行動がみられにくいことがあるんですが、これも、こつこつと適切に親が関わっていけば、何らかの愛着行動が得られるようになる、という文章を読んだことがあります。だからどんな子でも、心の中では親のこと、好きなんだと思うんですよ。
でも、親がその愛情に答えてあげられないのなら、子どもがかわいそうです。子どもに失礼です。

「産んだら好きになるかも」と産んだ子どもが、「産め産め」と言われてやむなく産んだ子どもが、育てにくい子どもだったら、一体どうなるんでしょう。子どもの気持ちを考えると、とても怖いです。
自分が「産みたい」と思って産んだ子どもであるのならば、万一子どもを好きになれないときがあっても、冷静になったときに「でもあのときは産みたかったしなぁ」と自分を見つめることができるでしょう。でも、産みたくなかったのに産んだ子を好きになれないときがあったら、きっと心のどこかで周りを責めるでしょう。自分の行動を見つめ直すのは、より難しいのではないでしょうか。
「すき」という気持ちは伝わります。「きらい」という気持ちも伝わります。親に「きらい」と思われる子どもの気持ちを考えると…。

私は、産む前から既に「好きになれないかも」と思うのであれば、子どもを産まないことをお勧めします。産むのであれば、「産みたい」と自分が思えなくては。出産は痛いし子育ては消耗するし大変だし。「出産おめでとう」という言葉にさえ、疑問を感じるくらいです。おめでたいのか、これ?とか思ってしまう。ホント、子どもをかわいいとでも思わなければ、やってられませんもの。

でも、私自身、出産前こんなにいろんなこと考えていた訳では全然ありません。産んで判ったことばかりです。経験としては、確かにものすごく貴重な経験をさせてもらっています。楽しくもあります。でも大変。ほんっと大変。ほんっとほんっとほんっとほんっと………

(2004/11/15追加)この記事の内容、別記事で追記をしています。ご関心がおありの方は、下記のトラックバックの内容をご覧ください。